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第2話「始祖のヴァンパイアが降臨したけど、ツッコミ厳しくない?」

ผู้เขียน: 烏羽 楓
last update วันที่เผยแพร่: 2026-06-13 23:17:10

 眷属召喚――それは、魔王が初めて行う“配下作成”チュートリアルらしい。

 核としての魔力が満ちきったタイミングで、世界の声が言った。

《それでは、眷属召喚を開始してください。意識を集中し、あなたの魔力を流し込むように》

 いや、ざっくりすぎだろ。集中って言われても、こちとら石ころなんだぞ。

 とはいえ、やるしかない。ぐっと意識を内側へ集中させていくと――

 ――ドクン。

 何かが“脈打った”感覚があった。

 そしてその瞬間、俺の核のすぐ目の前に、漆黒の魔方陣が浮かび上がる。

「おお……!」

 空気が張り詰める。魔力の奔流が発生し、周囲の岩盤がわずかに振動する。

 やがて魔方陣の中心から、ゆっくりと“それ”が姿を現した。

 すらりと伸びた足、腰まで届く金色の髪。

 肌は雪のように白く、目元は涼しげで――完璧なまでに整った顔立ち。

 美人とかそういうレベルじゃない。もはや芸術の域。

 ただし、その表情は終始無表情で、まるで石像みたいだ。

「……私の名はレイラ。始祖のヴァンパイアです」

 静かに、でも凛とした声が洞窟に響く。

 始祖の……ヴァンパイア?

 すげえ。なんか強そう。

 強いどころかラスボス寄りな雰囲気すらある。

 だけど――

「……それにしても、魔王のくせに石ころとは。”これ”が|主《マスター》とは情けないですね」

「えぇ……。なんか思ってたのと違う、俺の身体と一緒でなんか思ってたのと違う……」

「言い訳をする姿も滑稽ですね。まあ……姿形よりも“核”の質の方が重要。私を呼び出せる程ですし、特別に良しとしましょう」

 なんでこの美人さん、こんな毒舌なの!? 初対面でバッサリきますやん……。

《初期眷属とのリンクを確認しました。これより、ダンジョン構築の基本操作を開示します》

 場の空気もクソもないタイミングで、またあの脳内ナビがしゃしゃってきた。

 でもありがたい。こっちは素人もいいところだからな。

《魔王は、ダンジョンに侵入した者を討伐することで、経験値と拡張ポイントを獲得できます》

《討伐対象の強さに比例して獲得値が上昇します。討伐は、眷属・配下による撃破。罠による撃破でも同様にカウントされます》

 つまり……配下をこき使って、強い冒険者を倒せば俺が強くなる――ってことか?

「つまり、ブラック企業と同じ原理ですね」

「あ、その言葉使わないで。泣きたくなるから」

「ならば、せめてボーナス制度を設けて――」

「俺も貰ったことねぇよッ!」

 俺たちのやり取りを気にもせず説明が続く。

《次に、ダンジョンステータスを確認してください。“ダンジョンステータス”と唱えるとウィンドウが開きます》

 言われた通り、唱えてみる。

「ダンジョンステータス」

 ピコン、と軽快な音が響き、視界に青白いウィンドウが浮かび上がった。

──────────────────

【ダンジョンステータス】

名前:未設定(※初期値)

階層数:1

配下数:1(レイラ)

魔物数:0

罠設置数:0

拡張ポイント:10

経験値:0/100

──────────────────

 ウィンドウを眺めながら、世界の声が続けざまにナビをしてくる。

《まずは、拡張ポイントを使用してダンジョンの階層を増設してください》

「よっしゃ、レッツDIY。迷路とかにすりゃ強いんだろ?」

《その通りです。地形を複雑化することで、侵入者の進行を大幅に遅延させることができます》

「じゃあ……こうして、こう。分岐を三つ作って、こっちに落とし穴、あっちに毒沼……」

 ウィンドウ上の簡易マップを操作するだけで、岩盤がゴゴゴ……と音を立てて勝手に動いていく。

 うん、これ楽しいな。ちょっと昔のゲームを思い出す。

 社会のストレスをここにぶつけろって感じで、バリバリ罠を仕掛けてやるぜ……へへっ。

 俺のイメージに沿って地形が変わっていく。

 作り上げていくダンジョン構造を見ながら、なんかレイラが引き気味に目を細めているが気にしない、気にしない。

 むしろ、その反応になんかちょっとテンションが上がる自分がいる。やべえな俺。

《罠の設置完了を確認しました。次に、初期魔物の召喚を行ってください。ゴブリンなど低ランクの魔物が推奨されます》

「じゃあ、ゴブリンで。とりあえず三体……っと」

 またしても魔方陣が展開され、緑色の肌をした小柄な人型モンスターが三体、ぴょこぴょこと出てくる。

「グギャ!」「ギャギャギャ!」「オレ、ボス、マモル!」

 うるせぇなコイツら。見た目も喋りもチンピラ感すごい。

「ん? まてよ。さすがに三体は少なすぎか?」

 俺が思わず不安を口にすると、レイラが腕を組みながらちらりとこっちを見た。

「……心配いりません。私がいれば、それで十分です」

 どこまでもブレない無表情。そのドヤ顔ゼロの自信っぷりが、逆に説得力を生んでるのが悔しい。

《補足します。レイラは“始祖のヴァンパイア”であり、魔族の上位存在――“魔人”に匹敵する戦闘力を有しています》

「えっ、そんな強キャラだったの!?」

「当然です。契約主が石ころでなければ、もう少し説得力もあったんですが」

「石ころでごめんね?!」

《あ、そろそろ初の侵入者がダンジョンへ進入します》

「えっ、はやっ!? 待って、まだこっちは石のまま――」

 そのとき、入口近くの転移陣が光を放ち、足音が響いた。

 ガチャリと扉が開く音――そして、若い男の声が洞窟に反響する。

「ここが、例の新規ダンジョンか……へへっ、悪いが先に攻略して稼がせてもらうぜ」

 レイラが、ちらと視線をその方向へ向ける。

「ふふ、出番ですね。では、早速いってきます」

 その姿は、闇の中へと音もなく溶けていった。

 おいおい、こんなチュートリアルでいいのか?

 まさか“初仕事”が、いきなり命懸けだなんて聞いてないんだけど……

 やっぱり、どこまでいってもブラック企業じゃねーか!

 俺は、何もできない“しゃべる石ころ”のまま、ただただ、血と闇が交差する戦場の幕開けを――見届けるしかなかった。

 ……うん、これは確実に労基案件だ。

 ◆

 ――“魔王”としての人生は、まだ始まったばかり。

 だがすでに、予感だけはあった。

 この世界の底で、俺――いや、“ヴァルト・ノクス”が、確実に爪を研ぎ始めているということを。

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